僕はミツオ。
三重県に住む小学4年生。
今は、学校の帰り道。
でも、僕の通学路は、何もなくて、つまんない。
ついでに言うと、学校でも、嫌なことばかり。
そんな時、僕は、『吉井公園』に道草を食っていく。
でも、すべり台や、ブランコ、うんてい目当てじゃない。
黄色いベンチが目当てだ。
そこに座っていると、なんだか心が落ち着くんだ。
それに、家族や友達には話せない事も、ベンチには話せるんだ。
今日も、吉井公園に行く。
2時間目の国語のテストで、文章を書き写し間違えて、0点なってしまったんだ。
しかも、『ベンチ』と『ベンキ』を写し間違えたところもあった。
そんなマヌケな僕も、優しく見守ってくれる。
だから、黄色いベンチが大好きなんだ。
その日から、毎日吉井公園に行くようになった。
6月9日。やっぱり、今日も吉井公園に行く。
「よいしょ。」
お尻に違和感があった。立ち上がってベンチを見ると・・・
『ペンキ塗りたて』
あちゃー。
こんな風に、トラブルが色々あった。でも、僕は黄色いベンチが大好きだった。
しかし、あの日はひどかった。
6月24日。ベンチに座ると、こんなポスターが‼︎
『明後日、ベンチを宮崎市に移動します。』
僕は泣き叫んだ。シ•カ•シ
「コラ‼︎ サトシ‼︎」
ん?親戚の山江おばさんの声・・・?
なんと!いとこのサトシのイタズラだった‼︎
7月11日。ベンチに座ると、今度は、こんなはり紙が。
『明後日、ベンチを別府市に移動します。』
「もうだまされないぞ。」
しかし、翌日、吉井公園に行くと、
『明日、ベンチを別府市に移動します。』
「まさか・・・」
次の日。おそるおそる吉井公園に行くと、
「ドドドドドド」
「ゴゴゴゴゴゴ」
「バァァァ・・・」
本当にベンチの移動作業が始まっていた。
「そんな・・・」
僕は、あまりの悲しさで、声も出なかった。
そして、ベンチの足に抱きついた。
「ありがとう、黄色いベンチ。」
ついに、黄色いベンチはトラックに乗せられた。
遠い大分に旅に出た。
「僕も、黄色いベンチのように、元気を与えられる大人になりたいな。」
完