はるくんのお話しランド

小学生低学年の自作らくがき

【小説】さよらならクミー

【小説】さよらならクミー  2022/10/30

(小学生低学年の作品)

 

ある、つめたい風の吹く晴れた秋の日のことでした。

 

ゲンタたちは三兄弟です。

今日は、家族五人で市内を散歩をしています。

近くの公園で三男の元多が見つけました。泣いている子犬です。

 

「子犬が泣いている!!飼おうよ!!」ゲンタが言いました。

「飼う!!」みんなが言いました。f:id:takuchanchanko:20221030194610j:image

 

 

 

一度、家に帰ると瞬きする間もないほどのスピードで、再び散歩に行きました。

「何をしようか」とゲンタは、子犬に聞きました。

「ワーンワワン!!」と子犬は答えました。

 

ゲンタは犬語がわかるかのように、

「OK!!ボール投げね!!」と言いました。

続けて「じゃあ、あの公園でやろうか。」と言いました。

 

 

「あっ、そういえば、君の名前、何にしようか。」

とゲンタが言いました。

「ワワーン」子犬は言いました。

ゲンタは、こう聞き取ったそうです。

「クミー。クミー!!クミーにしよう。」

「九実(クミー)」

 

それから、毎日一緒に寝ては、一緒に起き、一緒に遊び、一緒に寝る。

次の日も一緒に起き、一緒に遊び、一緒に寝て、、、と生活をしていました。

 

もちろん、おたがい、相手のことをとても大好きに思っていました。

 

でも、どちらの方が相手を好いているか、ケンカになったこともありました。

でも、すぐに仲直りをします。

 

ある朝、ゲンタが「おはよー、クミー」とこえをかけても返事がありません。

 

見ると、ポーっと雲を見上げていました。

でも、へんなことは、まったくありません。

 

おかしい、、、

ゲンタは思いました。

 

しかも、その日は散歩も、ボール投げも

『お手をするべきか、ジャンプをするべきかゲーム』も

何を一緒にやろうとしてもずっと雲を見上げたまま。

 

その月はずっとそんな感じでした。

 

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そして、八月一日です。心をきりかえたように、いつもよりも、もっともっと、遊びたそうでした。

夜九時まで遊びました。

その次の日も、またその次の日も、さらにその次の日も

そんな風にたっぷり遊びました。

 

八月二十六日。その日も、たくさん遊びました。

その夜、クミーは、こう言いました。

「ワワンワワワワンワンワンワンワン」

 

「ま、、まさか、、、」

ゲンタは犬語がわかる(!?)ので

何を言っているのか、わかったのかもしれません。

 

次の朝、クミは今まで見たこともない、

泣きそうな顔をしていました。

ゲンタはクミーをとても気にしながら、朝食を食べに行きました。

 

朝食を食べると、すぐ、いつもの部屋に戻りました。

 

 

・・・・クミーが消えていました。

「やっぱり・・・・」

ゲンタは小さな声でそう言いました。

 

必死に探しましたが、クミーは、どこにもいません。

庭に出ると、道の先の方に、クミーと大きなクミーの後ろ姿が見えました。

 

『クミー・・・』ゲンタが心の中で言いました。

 

クミーの心に届いたのか、

クミーは振り返って、最後に笑顔を見せました。

ゲンタは涙を流しながらこう言いました。

 

「クミー」

その声は町中に響きました。

そして、こう言いました。

「さよなら、クミー」

 

それから、朝起きても、朝食を食べるだけ。

部屋もズンと暗くなりました。

 

でも、もう涙は流しません。

 

だって、ゲンタは、もうお兄ちゃんです。

これから、どんどん大きくなって、

大人になり、一人で生きていくのです。

 

だから、もう泣きません。